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歯科医療の将来 ~歯科技工士の現在と将来~【第3回】

松根 健介 (まつね けんすけ) 日本大学松戸歯学部 口腔健康科学講座

「歯科技工士」の仕事は歯科治療においてとても重要な領域だが、その内実は広く知られていない。しかも、近年では歯科技工士が技工士の職を辞めてしまうという問題も起きているという。歯科技工士の現在と将来について、専門家に執筆いただいた。

ノンメタルの治療が人気

 2016年保団連歯科技工士アンケートにて、歯科技工士(開設者)の労働時間(1週間あたり)は3人に1人が週81時間以上であり、さらに可処分所得は歯科技工士の半分以上が300万円以下と、長時間労働を強いられ、収入も低いという実態が報告1)されています。
 
 また、歯科でよく使用される銀歯(金パラ)は、12%の金、20%のパラジウム、50%の銀、残りは銅や亜鉛などで出来ています。この中でパラジウムの値は触媒として自動車産業等と密接な関係にあるため、昨年に比べると1グラム3000円位であったのが今年は7000円位と2倍以上になっています。しかし、保険点数に改定はないため、銀歯を作ると赤字を出してしまうという現象が起きています。
 
 そこで、時間がかからなく金属を使用しないノンメタルの治療が出てきました。その中でもCAD/CAM(computer-aided design/computer-aided manufacturing)が注目されています。CAD/CAMは歯科だけではなく、自動車やパソコン、携帯電話など日用品に用いられています。CAD でパソコン上に図面をかき、CAM で任意の加工プログラムを作り、工作機械に CAM で作ったプログラムを入力することで形を作製でき、歯科でも保険適応されています。
 
 CAD/CAMが出たての頃は使用できるか疑われましたが、近年は品質も良くなり技工作業の短縮、技工再製の短縮、安定した稼働等が認められ、CAD/CAMを導入している多くの歯科医院、歯科技工所で、保険の小臼歯および第一大臼歯の冠をCAD/CAMに移行しています。
患者側からみても、何種類もの色を持つCAD/CAMで作製された冠は自然の歯に近いため、患者側のニーズに合っており今後さらに広く応用されていくと思われます。
 
 岡山歯科技工専門学院の調査において、昭和50年と平成30年と比較を行ったところ、学生の志向は理系から文系が中心となり、そして技術力・器用さは低くなり、探求心・独立心・ハングリーさ・自主性・独創性がなくなってきていることが報告されています。しかし、面白いことに、IT・デジタル・CAD/CAMに対しては高い興味を持っていることも報告2)されています。
 
 新卒者は新しい機械がある歯科技工所を選択することが多くなっています。歯科技工士の典型的な3Kの職場は少なくなり、CAD/CAMにより印象採得や、石膏の模型を作製などの作業が少なくなり、作業効率・作業環境に改善を認めるようになってきています。この傾向は、先に述べたような金属を用いない歯科治療を目指している歯科医師のニーズと合致していると感じられます。
 
 しかし、CAD/CAMの機械が高価で場所をとるため、個人ではなかなか導入できない、つまり小さな歯科技工所ではCAD/CAMの機械を入れることができないという現象が起きています。
 
 今後はCAD でパソコン上に取りこんだデータが外に漏れることがないようにしっかり管理出来るシステムが必要であると考えられます。また、歯科医院の売り上げが厳しい時代に、歯科技工料を極端に下げて帳尻を合わせるのではなく、お互いがwin-winになるようにしていかないと、技工所、特に小さな技工所はこの先残っていくのが困難になってしまうと思われます。
 
 
■ 注

1)全国保険医団体連合会:日本の歯科技工を守ろう.月刊保団連1254.1-12.2018
2)厚生労働省:第3回歯科技工士の養成・確保に関する検討会(平成30年9月6日)「岡
山歯科技工専門学院の状況」、1-27、2018.

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松根 健介 (まつね けんすけ) 日本大学松戸歯学部 口腔健康科学講座 日本大学松戸歯学部 講師(小児歯科)2002年4月~
歯科医学教育学(兼)
医療相談員(兼)
歯科医療管理学講座 講師 2014年4月~
口腔健康科学講座 講師(顎口腔機能治療学分野)2018年4月~