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歯科医療の将来 ~歯科技工士の現在と将来~【第4回】

松根 健介 (まつね けんすけ) 日本大学松戸歯学部 口腔健康科学講座

「歯科技工士」の仕事は歯科治療においてとても重要な領域だが、その内実は広く知られていない。しかも、近年では歯科技工士が技工士の職を辞めてしまうという問題も起きているという。歯科技工士の現在と将来について、専門家に執筆いただいた。

歯科技工士が住みやすい環境

 今一番大切なことは、歯科技工士を知ってもらうことです。生まれてから死ぬまで続く歯科医療にとって歯科技工士の仕事は、必要不可欠で重要な仕事です。しかし、歯科技工士の成り手は少なく、今まで3回を通して歯科技工士が生きづらいことを述べてきました。国家資格を持つ歯科技工士、もう少し生き易くてもいいのではないでしょうか。1)されています。
 
 時給にすると671円~899円という試算がでており、せめて最低賃金まで引き上げればと思います。それには、歯科技工物の流通価格を少しでも歯科技工(所)士:歯科医院=7:3の割合(大臣告示があるが、法的拘束力がないため現在自由競争になってしまっている)に持っていければ歯科技工士の時給が上がると思います。さらに、口腔内の歯科技工物作製が安いという理由から国外にて作製されるという事が起きています。海外へ歯科技工物を出す場合、歯科技工物が医療品ではなく雑貨として扱われているのが気になります。
 
 今の若い方はCAD/CAMが主体の技工所に勤めるため職人気質の伝承がうまく行かないために、入れ歯作製など技術を伝えることができずに、確かな腕を持っている技工士さんが次々に辞めていってしまいます。技工物には細かい調整が必要であり歯科医師と歯科技工士により、良い制作物が出来上がるのではないでしょうか。今流行りの、3Dプリンターを用いた入れ歯などの作製方法が出てきていますが、何年か先に問題点を解決し現在のような入れ歯などに移行するかもしれません。また、歯科技工士と歯科医師が患者さんの口腔内について話し合っている姿は輝かしいものです。しかし、現在も歯科技工士の数は減っており機械では対応できない人間味の部分は人でなければ成り立たないのではないでしょうか。「歯科技工士さんを探している」と周りの歯科医師の話をよく聞きますが、歯科技工士が減っていくと、制作物を口腔内に装着するのに1週間で出来てきた技工物が2~3週間かかってしまう日がすぐ近くに来ているのではないでしょうか。
 
 さて、歯科技工士教育機関数は、2000年頃は72校あったのが、2008年は61校、2017年には53校まで減ってきており、歯科技工士国家試験も2017年には1000人を割り、現在は約900人まで落ち込んでいます。この傾向はどんどん進行してしまうのではないかと心配になってしまいます。歯科技工士は大変有意義な職種であることは認めますが、金銭的に良い状態にするとともに、より良い口腔環境を目指す患者さんのために国、歯科医師が歯科技工士にとってより良い環境を作っていくことが大切と思われます。60歳の歯科技工士の話しでは自分達が学生の時は200人位いたが、現在は3、40人まで減少してきていると言います。また、自分の子供を歯科技工士にしようとは思わなと言います。歯科技工士学校が維持できない人数に落ち込み閉鎖してしまう事が起きています。歯科技工士教育機関および歯科技工所で、教育制度を整えてより良い歯科技工士を若い時から育てていくことが重要であり、目先の値段を追ってばかりではどんどん歯科技工士は減ってしまうと思います。新型コロナウイルスの感染拡大が続いていますが、日本で歯科技工士によって作製される歯科技工物が適正な価格で取引されるのが一番いいのではないでしょうか。現に技工所が倒産や閉鎖してしまうのが、目に見えるようになっており、歯科技工所は青息吐息の状態であると思われます。
 
 
■ 参考文献

・厚生労働省:第4回歯科技工士の養成・確保に関する検討会(平成30年11月19日)「歯科技工士の勤務状況等」
・日本歯科技工士会:歯科技工士とは
(http://sp.nichigi.or.jp/about_shikagikoshi/shikagikoshi.html)
・全国保険医団体連合会:日本の歯科技工を守ろう.月刊保団連1254.1-12.2018
・日本歯科医学教育学会:歯科医学教育白書2017年度版(2015-2017年).155-187.2019

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松根 健介 (まつね けんすけ) 日本大学松戸歯学部 口腔健康科学講座 日本大学松戸歯学部 講師(小児歯科)2002年4月~
歯科医学教育学(兼)
医療相談員(兼)
歯科医療管理学講座 講師 2014年4月~
口腔健康科学講座 講師(顎口腔機能治療学分野)2018年4月~