連載

一覧

歯科医療の将来 ~歯科技工士の現在と将来~【第1回】

松根 健介 (まつね けんすけ) 日本大学松戸歯学部 口腔健康科学講座

「歯科技工士」の仕事は歯科治療においてとても重要な領域だが、その内実は広く知られていない。しかも、近年では歯科技工士が技工士の職を辞めてしまうという問題も起きているという。歯科技工士の現在と将来について、専門家に執筆いただいた。

歯科技工士とは?

 皆様が「歯医者さん」で思い浮かべるのは、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手と受付の4つの職業ではないでしょうか。しかし、あまり知られていませんが「歯科技工士」も活躍しています。一部の歯医者さんでは、歯科治療において歯科技工士が患者のユニット(歯科治療用の椅子)まで行き歯科医師と患者の口腔内を話し合う場面に遭遇するかもしれません。歯科技工士とは歯科医療の一端を担う医療技術専門職であり、歯科医師と歯科衛生士と歯科技工士といった3つの国家資格のうちの1つでもあります。
 
 歯科技工士の人数を見てみると、平成28年は34,640人で平成18年は35,147人と、10年で約500人減を示しています。また、免許登録者は平成28年118,271人で就業率は29.3%、10年前の平成18年は104,794人で33.5%であり徐々に減少していっているのが気になります。歯科医師との関係を考えてみると、歯科医師数は平成28年では104,533人で、医療施設の従事者はその内97.1%です。歯科医師の数と歯科技工士の数が免許登録者はほぼ同数ですが、就業率は歯科技工士の数が圧倒的に少なくなっているのも気になるところです。
 
 さて、歯科技工士の仕事は次のように定められています。
「歯科技工士法 第18条  歯科医師又は歯科技工士は、厚生労働省令で定める事項を記載した歯科医師の指示書によらなければ、業として歯科技工を行ってはならない。ただし、病院又は診療所内の場所において、かつ、患者の治療を担当する歯科医師の直接の指示に基づいて行う場合は、この限りでない。」
 
 つまり、歯科医師の指示書を基に、歯の被せ物(一般に「銀歯」と呼ばれる、インレーやクラウン・ブリッジ)入れ歯(局部義歯・総義歯)CAD/CAM(CADはコンピューターよる設計支援、CAMはコンピューターによる製造支援を言い、CADシステムで作成した設計データは、CAMシステムへ出力されて加工を行う)インプラント矯正装置(矯正装置には取り外しが出来るものから、直接歯などに取り付けるものがある)マウスピースなど、歯科のほとんどの技工物にかかわっています。歯科技工士は、一部職人気質な所があり、技術の習得には時間がかかりますが、高度な精密技工技術とともに、患者さんごとに異なる咀嚼運動(噛み砕くこと)や嚥下運動(飲み込むこと)について考えることが必要であり、高齢者が多くなっている事を考えると歯科技工士の治療参加の場面も増え、大変重要度が増してゆくものと思われます。そして、呼吸、発音、感覚、姿勢維持、身体運動能力、歯の色や形を把握する繊細な審美感覚が求められ、患者さんにとって満足度が高い技工物などができるようになれば、歯科技工士に取っても満足できる仕事だと思います。
 
 
■ 参考文献

・厚生労働省:第4回歯科技工士の養成・確保に関する検討会(平成30年11月19日)「歯科技工士の勤務状況等」
・日本歯科技工士会:歯科技工士とは
http://sp.nichigi.or.jp/about_shikagikoshi/shikagikoshi.html

Pocket
LINEで送る

松根 健介 (まつね けんすけ) 日本大学松戸歯学部 口腔健康科学講座 日本大学松戸歯学部 講師(小児歯科)2002年4月~
歯科医学教育学(兼)
医療相談員(兼)
歯科医療管理学講座 講師 2014年4月~
口腔健康科学講座 講師(顎口腔機能治療学分野)2018年4月~