連載

一覧

経済の大きな流れ ―問題点と将来の展望― 【第2回】世界経済の高成長を支えたアメリカの限界

水谷 研治(みずたに けんじ) 名古屋大学 客員教授

日本経済は成長力を失くした。それでも大きな歪みはなく、国民は安寧を貪っている。身近な目先の問題を議論するだけで、国全体の将来を考えることが少ない。しかし、個人にとっても企業にとっても、国家経済の影響は大きい。日本経済の将来を展望し、対応を考えるシリーズ連載。

世界経済の高成長を支えたアメリカの限界
  ―膨大なアメリカの対外純借金―

 世界経済は長年にわたり高い成長を続けてきた。もちろん一時的な停滞は起きている。しかし、しばらくすると問題を乗り越えて再び成長力を取り戻してきた。それだけに今後もこのような力強い上昇傾向が続くと考えがちである。
 
 世界経済は異常な力で長期間にわたり押し上げられてきている。その役割を果たしてきた経済大国アメリカが限界を迎えつつあることに注目する必要がある。
 
 アメリカが世界最大の圧倒的な経済大国になったのは第二次世界大戦の結果である。ヨーロッパが戦災で疲弊し、唯一無傷で生き残った数少ない大国であった。それまでに、かなりの経済力を培っていたアメリカは巨大な生産力で世界各国の復興に貢献した。アメリカからの輸出が各国を潤し、生産再開に役立った。輸出がアメリカ経済をさらに強大にし、それが輸出力を高め、世界の復興を後押しする好循環が続いた。
 各国はアメリカから輸入しても、アメリカへ輸出できる物を作り出すことができなかった。アメリカは輸入せずに輸出を増大させ、莫大な貿易収支の黒字を続けた。その結果、世界中の富を一手に集め、世界唯一の巨大な経済大国になった。
 
 ヨーロッパ各国や日本の経済復興が進み生産力が高まると、アメリカの相対的な優位性がなくなる。アメリカの輸出が伸び悩み、逆に輸入が増えていった。この傾向が続きアメリカの貿易収支は赤字に変わった。そして赤字が拡大していった。
 赤字を続けることは難しい。支払資金が枯渇するからである。巨額の資金を貯め込んだアメリカは、それを使うことで赤字を続けることができた。しかし莫大な赤字が続くと貯めた資金がなくなる。その後は海外から借金をして膨大な赤字を続けている。
 
 その結果アメリカの対外純借金は莫大な額になってしまった。かつてアメリカが最高に貯め込んだ対外純資産の30倍にも上る異常な対外純借金となっている。もはや放置しておける状況ではない。
 
 アメリカは膨大な貿易赤字をなくして黒字へ転換しなければならない。長年にわたり世界経済を押し上げ続けてきたアメリカはすでにその力を失っている。よい製品を安く生産し世界へ輸出することが難しくなっているからである。輸出力に合わせて輸入を大幅に削減せざるを得ない。
 
 この間、世界各国はアメリカへ膨大な輸出をして経済を拡大させてきた。その恩恵を最大に利用したのは中国である。中国経済が飛躍的な成長を続け、中国自身が世界中から膨大な輸入をするようになった。新興国と言われた国々も同様である。おかげで世界経済は高い成長を続けることができた。
 
 我が国がその恩恵を受けてきたことは当然である。経済大国となっていた日本はアメリカはもちろんのこと、躍進する中国へ莫大な輸出をすることができた。その他の成長する国々を含め、世界中へ大量の輸出をすることによって我が国は高い経済水準を維持してきている。
 アメリカへの膨大な輸出によって支えられてきた日本を含む各国の経済は縮小するであろう。それが世界経済を悪化させる。そして再び元へは戻らないはずである。

Pocket
LINEで送る

水谷 研治(みずたに けんじ) 名古屋大学 客員教授 1933 出生
1956 名古屋大学経済学部卒業
1989 経済学博士(名古屋大学)
1956 東海銀行入行
1960-62 経済企画庁へ出向
1964-65 NY CITI Bankへ出向
1974-83 清水 秋葉原 八重洲 ニューヨ-クの各支店長
1983-92 調査部長
1993 東海銀行専務取締役退任
1993-99 東海総合研究所 理事長 社長 会長
1999-2008 中京大学教授
2012- 名古屋大学客員教授