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題 名『優しい日本人がこの国をダメにする』小柳津広志著

著者名
小柳津 広志(おやいず ひろし)
ISBN
9784779060557
出版年月日
2011年12月15日
価格
838円+税
投稿日
キーワード
社会・政治
概要

年間の財政赤字が税収を上回り、デフレ状態は20年も続いている。先進国とは言い難い国民1人当たりのGDP、地方都市の医師不足、毎年3万人を超える自殺者……日本という国は確実に衰退している。その原因は情緒的で「優しい」という国民性にある。本書では、国際競争力を備えた戦略的な国民を育てるために、日本が今後100年間に行うべき具体的な社会システム改革を提唱する。

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編集部より
毎年12月中旬になると、日本漢字能力検定協会がその年の世相を表す「今年の漢字」を発表する。改元のあった昨年には伸びやかな「令」の字が書かれた。本書が刊行された2011年の一字は「絆」である。東日本大震災被災者への国をあげた(精神的なものも含む)支援や、なでしこジャパンのワールドカップ優勝が背景にあったようだ。本書『優しい日本人がこの国をダメにする』は、こうした当時の傾向に逆らう挑戦的な表題を冠して世に出たということになる。

筆者の主張の大意を要約した一文を「おわりに」から引用しよう。「日本人は情緒的に思考する国民であるため、戦略的思考が苦手である」(本書199頁より引用)。小柳津氏はしばしば他者への「甘え」も俎上に載せるが、人々の絆の裏に潜む負の側面を問題視しているということだろう。 こうした筆者の提言に難色を示す読者もいるかもしれない。多様性を尊重し、多くの人々に寛容であることを良しとする動きは年々強まっている。しかしそれと同時に、明らかな悪行をエンターテインメントとして消費するようなコンテンツが台頭しつつあるようにも思われる。今年5月には「迷惑系YouTuber」を自称する男性が、会計前の商品を店内で食べる動画を投稿して逮捕された。もちろん否定的な意見が多かった一方で、熱狂的な支持があったのも事実だ。善悪の判断よりも目先の刺激を優先させる彼ら視聴者たちは、仲良しこよしの日本社会が生んだねじれとも言える。

小柳津氏の鋭い批評眼によって暴き出された問題点は、日本人がその「優しさ」に拍車をかけている現代において、刊行当時にも増した重要性を有している。筆者の苦言に積極的に耳を傾けることで、他者を甘やかしてしまうことのない真の「優しさ」とは何であるのかが見えてくることだろう。

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著者
小柳津 広志(おやいず ひろし)