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題 名『イゴノミクスの世界』渕上勇次郎著

著者名
渕上 勇次郎(ふちがみ ゆうじろう)
ISBN
9784344925403
出版年月日
2019年11月26日
価格
800円+税
投稿日
キーワード
実用書、エッセイ
概要

大隈重信は言った。碁は経済であると――。

〈イゴノミクス〉とは、囲碁(Igo)×経済学(economics)=〈イゴノミクス(Igonomics)〉

〈イゴノミクス〉によって、経済学の基礎と⽇本経済の転機を分かりやすく解説。
高崎商科大学教授がユーモアを交えて綴った、学⽣からビジネスマンまで楽しく読める一冊です。

・市場経済の基本から「仮想通貨」「ベーシックインカム」まで徹底解説。
・なぜ企業は「むさぼり勝とうとしてはならない」のか?
・渋沢栄一・松下幸之助・藤沢武夫らもイゴノミクスの実践者たちだった?
・ 日本経済は「シェア重視の囲碁型資本主義」だ。
・「経済成⻑」の次なるステージ「成熟社会」を的確に予測。

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編集部より
「イゴノミクス」という耳慣れない単語は、「囲碁」と「エコノミクス(economics=経済学)」を足し合わせた、著者独自の造語である。この語が示しているとおり、碁と経済には多くの類似点があるというのが筆者の主張である。こうした発想は何ら突飛なものではない。例えば経済学の父アダム・スミスは『道徳感情論』のなかで、人間社会を「巨大なチェス盤」になぞらえていた。また、数学者ジョン・フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンシュテルンの著書に端を発する「ゲーム理論」という考えに代表されるように、ゲームに見られる駆け引きや心理戦が現実の市場でもしばしば見受けられることは、今や経済学の常識といってもよい。

とはいえ、筆者の主張は各主体の自己中心性・合理性を中心に据えた古典的経済学の水準に留まるものではない。渕上氏は「囲碁が本来、いうなれば勝敗にこだわらない互角の『戦い』を理想としていることを意味しているのではないか」「〈共存することの大切さ〉を示唆しているのではないか」(本文36頁より引用)と考えている。つまり、イゴノミクスで考えられているような経済モデルは、個人が我欲を追求した先にあるものとは全く別の次元にあるということだ。そこではむしろ、相手への配慮や敬意が道徳として──さらには個人の美学として──称賛される。

もちろん、筆者がこうした経済活動をたたえるのは、単に個人の道徳心を尊重するためではない。筆者は碁であれ経済であれ、欲に溺れることで「大局」を見失い、最終的に自らの身を滅ぼすことになると戒めている。他者を尊重する控えめな姿勢は、こうした失敗に対する抑止力として働く。したがって、イゴノミクスはなれ合いを良しとする牧歌的提案ではなく、むしろ既存の経済理論の良しあしを改めて問い直し、改良しようとする試みであると言えるだろう。

フランスでは、異なる二つのものが奇跡的な相性で調和することを「マリアージュ」と呼ぶ。本書はまさしく碁と経済のマリアージュと呼ぶにふさわしい。本書に倣い、読者が各々の関心に結びつけて経済活動を見ることができれば──あるいは逆に、経済学的観点から自らの趣味を見つめなおせば──、また独創的かつ新規的な着想が生まれていくのではないだろうか。

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著者
渕上 勇次郎(ふちがみ ゆうじろう)