ルネッサンス新書

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題 名『ウェブ時代の音楽進化論』望月寛丈著

著者名
望月 寛丈
ISBN
9784779060274
出版年月日
2010年10月30日
価格
838円+税
投稿日
キーワード
評論
概要

インターネットの普及とデジタル技術の向上によって、音楽を取り巻く状況は劇的に変化している。プロではない一個人が、自作曲を全世界に向けて発信できるようになった。彼らこそが、次世代のアーティストなのだ。新たな音楽は、ポップスとどう違い、どう解釈されるべきなのか。制作技法や作品の特徴はどうなるのか。転換期を迎えた音楽文化の激変する未来を予測した意欲作。

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編集部より
2018年12月5日、NewsPicksによるライブ番組「WEEKLY OCHIAI」に、indigo la Endやゲスの極み乙女。などで活躍中の音楽家・川谷絵音氏が出演した。川谷氏はそこで「音楽を広める必要はない」という旨の発言をしている。この発言はポップミュージックに対する聴衆の一般的態度を正確に言い当てている。すなわち、音楽を取り巻く環境は、茶の間の誰もが口ずさめる歌謡曲の時代から、個々人が密かに楽しむプライベートの時代になったのだ。

本書『ウェブ時代の音楽進化論』が刊行されたのは2010年のことだが、文中の記述からは著者の望月氏がこうした動向の前触れを敏感に汲み取っていることが窺える。もはや演奏者が大衆の面前でパフォーマンスをする必要はない。作者も身元を明らかにする義務はない。なぜならそのような接点などなくとも、聴き手と演者・作曲者のあいだの距離は、今やインターネットを通じてほとんどゼロ距離にまで接近しているからだ。

本書の公刊と同じ2010年に勃興した「ヴェイパーウェイヴ(vaporwave)」という音楽ジャンルは、80年代ならびに90年代のポップミュージックを加工し再利用することで、とうに過ぎ去った最盛期の記憶の残骸、あるいは墓標を音楽的に表現している。このジャンルの旗手であるアーティストのほとんどが匿名であるという事実も、本書を踏まえると示唆的だ。匿名の個人によるポップミュージックへの葬送歌としてのヴェイパーウェイヴは、時代を同じくして流れ始めた本書のBGMのようだ。このヴェイパーウェイヴ、実は『ユリイカ』2019年12月号の特集を飾っている。葬送歌が未だ止んでいないということは、逆説的ではあるもののポップスにも未だ復活の可能性が残されていることを示している。

また、インターネットが人々の生活に当たり前の要素として浸透したことで、そもそもネット/リアルの二分法そのものが失効していると見ることもできる。ネット発のアーティストが大勢誕生していることからもそのことは明らかだ。本書のタイトルにもなっている「ウェブ時代」は、今また新たな変化を見せているのだ。こうした現在の音楽業界の動向についても、望月氏に改めて伺ってみたい。

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著者
望月 寛丈