題 名福沢署名入著作の原型について

発行日
なし
投稿日
2018.02.16
発表者名
平山洋
所 属
静岡県立大学国際関係学部
キーワード
福沢諭吉
要 約

 福沢諭吉の思想と生涯について研究。福沢については、日本の近代化に大きな貢献をなした、という肯定的な評価がある一方で、その日本の発展のためには近隣諸国を犠牲にしてもよいとするアジア蔑視の侵略論者という否定的な評価もある。
 後者の評価は、1930年代初頭の『続福沢全集』に収録された新聞『時事新報』の社説1200編余りが福沢の論説として扱われたために出てきた。
明治時代に福沢本人が作った全集や、大正時代に編まれた全集には、アジア蔑視の侵略論として批判されている社説は含まれていない。
 福沢没後30年以上経過して出現したこれらの社説の多くは、福沢が経営していた『時事新報』で論説委員をしていた弟子の石河幹明が執筆したものだ。
代筆については『続福沢全集』の「附記」で石河自身が明言していたが、この「附記」は1960年代に現行の『福沢全集』が編纂されるにあたって削除された。つまり、石河が書いた社説が大量に何の断りもなく『福沢全集』に収録されている。
 どれが福沢でどれが福沢ではないのか。その判別は容易ではないものの、比較文学者の故井田進也氏が編み出した文体判定法(井田メソッド)により、アジア蔑視の侵略論とされる社説はほぼ石河の作だったことがわかった。
 以上の研究成果を踏まえて、本論文では福沢署名著作に先行する単発社説を、井田メソッドによらずに探究した。そして、石河幹明が福沢署名著作の原型となる社説の大半を全集未収録としていたことを明らかにした。

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プロフィール
平山洋 著者は福沢諭吉が主宰していた新聞『時事新報』の社説の起草者を新たな方法論によって判別し、その中から福沢由来の社説を選び出すことで、ジャーナリストとしての福沢の全体像を再構成する。