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人生100年時代に不可欠なプロティアン・キャリアとは?【第1回】

田中 研之輔(たなか けんのすけ) 法政大学 キャリアデザイン学部 教授

終身雇用社会が崩れつつある現代。自ら変容し、キャリア戦略を練ることは重要だ。 「プロティアン・キャリア」の考え方を紹介しながら、自分らしく生きる術を伝授するシリーズ連載。

第1回 「終身雇用はもう限界」の今、なぜ、プロティアンなのか?

 世の中はとんでもないスピードで変化している。私が生まれたときには、携帯電話も、インターネットも、ソーシャルメディアもなかった。たった数十年で我々は劇的な変化を経験した。仕事の諸々の調整は、メールを開くまでもなく、facebookメッセンジャーでやりとりをする。デジタル化のスピードは目覚ましいものがある。
 技術革新がさらに速度を上げている。現金を使わなくても生活できる。空飛ぶ車も技術的には完成した。民間企業による宇宙旅行も将来、現実化しそうだ。
 そう、私たちが生きる生活空間は劇的に変貌している。
 
 加速度的な変化にたいして、変われない自分、変わらない自分。
 今いる、組織の中でしか働くことができない自分。
 組織の中でも、たいした活躍もできていない自分。
 どうせ変われないのなら、このまま、波風立てずに、逃げきろう。
 
 劇的に変わる世の中で、変わらないことで逃げ切る生き方もある。確かに、目の前の仕事をこなしていくことだけでも毎日は過ぎていく。しかし、変わらないことで直面するのは、組織内での停滞感や働くモチベーションの低下だ。そのような状態をキャリア論ではキャリア・プラトーと認識する。
 キャリア・プラトーとは、「高原」を意味する言葉で、組織で働く人がある時に直面する「停滞状態」を指す。これまで登ってきた山で、それ以上のキャリアップが見込めずに「頭打ち」になる状態。山の頂上ではなくて、中腹の「溜まり場」に滞留するというイメージに近い。
 このキャリア・プラトーから抜け出すきっかけを与えてくれるのが、プロティアン・キャリアという考え方だ。
 

プロティアン・キャリアとは?

 プロティアン・キャリアとは、ボストン大学経営大学院で組織行動学や心理学の分野で教鞭をとっているダグラス・ホール教授が1976年に提唱した概念。
 
 「プロティアン」という言葉の語源とは、ギリシア神話に出てくる、思いのままに姿を変える神・プロテウス。神プロテウスは、火にもなり、水にもなり、時に獣にもなったりと、環境の変化に応じて、変幻自在に姿を変える。
 プロテウスの神でおさえておくべきポイントは、変化に応じて、自分の意思で自由に姿を変えることができるという点だ。その言葉にキャリアを掛け合わせて、ホール教授が、社会や環境の変化に応じて、柔軟にキャリアを変えていく、「変幻自在なキャリア」として「プロティアン・キャリア」を提唱した。
 ポイントは、次の3つだ。
 
 キャリアは組織に預けるものではなくて、自ら育て形成する
 キャリアとは昇進とか結果ではなくて、生涯と通じた全過程である
 キャリアは変化に応じて、自ら変えていくことができる

 

 出典:NewsPicks 田中研之輔「今、再評価されるプロティアン・キャリアとは」(https://newspicks.com/news/3607208/body/)
 

プロティアン・キャリア診断

 ここでキャリア診断を行う。15項目の診断項目がある。
 

 
 こちらのチェック項目数は幾つになっただろうか? チェック項目の合計数から3つの人材に分類できる。
 

 
 ここで大切なことは、今のキャリア状態をまず、客観的に把握すること。こちらの3つの人材分類は、現時点での暫定的な状態にすぎない。いくらでも変えていくことができる。項目が一つでも増えていくように中長期的なキャリア戦略を練ることが必要だ。

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田中 研之輔(たなか けんのすけ) 法政大学 キャリアデザイン学部 教授 博士(社会学)。専門:キャリア論 一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめる。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手がける。著書23冊。『辞める研修 辞めない研修―新人育成の組織エスノグラフィー』。『先生は教えてくれない大学のトリセツ』、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』、『覚醒せよ、わが身体。』、『丼家の経営』等。企業の取締役、社外顧問を14社歴任。最新著に『プロティアン』(日経BP)